「山笑う」

次第に春めき暖かくなってきた頃、ふと山を見上げると今までと表情が違って見え、とても心惹かれました。冬の間、茶や渋い緑に包まれ静かに眠っていたような山に、いつの間にか新緑や山桜が混じり始め、明るい陽光が差し、きらきら、もこもこと可愛らしい立体感が表れています。

思わず「綺麗だなあ~」と見とれていると、近くにいた人が、「こういうのをね、『山笑う』って言うんだよ」と教えてくれました。山が笑うなんて、なんて素敵な表現だろうと思いました。

後で調べてみると、これは俳句などに使われる季語でもあるそうです。この言葉の入った俳句をいくつか見つけたので、一部ご紹介しますね。

 水底の 石のゆらめき 山笑ふ     ― 長谷川櫂(はせがわ かい)

 ほろ~と 土まろばせて 山笑ふ    ― 星野立子(ほしの たつこ)

 山笑ふ ふるさとびとの 誰彼に    ― 楠本憲吉(くすもと けんきち)

新しい言葉との出会いは、日常により一層の味わいを与えてくれます。

おおぞらと山