野口健対談-屋久島おおぞら高等学校野口健-古川泰久

野口健プロデュース環境学校

屋久島は理想の教室だ

古川 野口さんがそもそも環境学校を始められた理由は?

野口 エベレスト等の高山に登ってたくさんのゴミを見つけました。しかも日本人の登山隊が残したものが目立ちます。それがショックで清掃登山を始めたのですが、それでもゴミは捨てられます。ならばゴミを捨てない「心」を自分なりの方法で育てようと思ったのがはじまりです。

古川 屋久島ではどのようなプログラムを行ったのですか?

野口 単に自然を守るという一方的な姿勢でなく、あえて木を伐るなどの林業体験を通して、この島の産業や木の文化を含んだ「人と森の共生」について考えてみました。屋久島おおぞら高等学校はなぜこの地を選んだのですか?

古川 富士山や長野県などの他の候補地も見ましたが、やはり屋久島の自然は圧倒的です。生徒には現状に行き詰ったり、苦戦している子も多いのです。この自然に身を置き、彼らがまず自分もその一部だと感じてほしい。そして抱えている悩みを少しでも小さく感じてくれるといいと思いました。

野口 この島の生命力は見た目からしてインパクトがありますね。例えば、樹木が倒れまいと岩の上にまで根を張らせている様には“この地で生き抜いてやる”という強力なメッセージを感じます。とても元気づけられますね。

今こそ身体をはった教育を

古川 野口さんは高校にどのような思い出がありますか? 

野口 私はたいへんな落ちこぼれで荒れていました。そんな自暴自棄になっている時に校長先生に殴られたんですよ。確かに体罰はあってはなりません。でもその先生の目は真剣でした。暴れる生徒を力で制しようというのではなく、言葉にならない想いごと本気でぶつかってきてくれました。それがうれしかったことを覚えています。

古川 現在の学校は多くの課題を抱えていますが、やはりコミュニケーションの希薄さはひとつの問題ですよね。誰かが自分を見てくれているという安心感は生徒には絶対必要だと思うのです。そのため、まっすぐ「ほめる」「しかる」ということの大切さ。この点は全力で取り組んでいます。

生きる力を引き出したい

野口 屋久島おおぞら高等学校はどんな学校を目指していますか?

古川 ひとつには多様性を受け入れる学校。本校では既存の枠に収まりきらない生徒が多いので、カリキュラムは多彩。教員もバラエティーに富んでいます。ユニークな経験があったり、伝えるべき思いと言葉と姿をもった大人は全て先生です。

野口 “個性は大事。個性を尊重しましょう“と理屈ではわかっていても、その個性を受けとめるためには学校も幅の広さを持っていなければなりませんね。

古川 一人で教えられることには限界があるので、多彩な人材と、それから野口さんのような方々も招いて、その肉声を聞く機会を設けたい。そういった体験から将来への視野を大きく広げていってあげたらと考えています。

野口 屋久島ではどんなスクーリングを?

古川 この生命力あふれる屋久島そのものが教室です。チームビルディングやマイ・アクションプラン等、KTC独自のグループワークメソッドを用い、1「誘う」2「待つ」3「声をかける」4「ルールをつくる」5「応援する」6「譲る」7「もめる」8「競い合う」9「仲直りする」、ちから=コミュニケーション力を体験します。


野口 貴重な経験になりそうですね。

古川 少なくとも年1回、この地で学び、遊び、感じます。そして「思いを伝えること」「考えること」「モノを作ること」「我慢すること」「人と交わること」という本校が掲げる5つの〈生きる力〉を養います。この自然と新鮮な体験が与える影響は大きく、生徒は命の大切さを感じ、感受性を高め、そして“自分をもっと好きになって…”いく。その内なるエネルギーはこれからの学校生活やキャリアデザインにもつながっていくのです。

野口 いや、うらやましい。私も今から入学したい(笑)。

古川 歓迎しますよ(笑)。中学卒業または同程度の学力があれば誰でも、全国どこからでも入学できますから。

屋久島おおぞら高等学校